鼻の病気
アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎
ホコリや花粉など、特定の物質により、くしゃみや鼻水、鼻づまりなどの鼻炎症状が起きる病気が「アレルギー性鼻炎」です。アレルギー性鼻炎は、国民の4割が発症している病気であり、当院のある大田区全体では約28万人、馬込地区では約2.2万人と、多くの患者さんが悩まれている症状で、小さなお子さんから大人まで患者数は近年ますます増加傾向にあります。
アレルギー性鼻炎の症状は?
アレルギー性鼻炎の三大症状は、「くしゃみ、鼻水、鼻づまり」です。
発症すると、水のようなさらさらとした鼻水が止まらなくなり、くしゃみを連発するほか、ひどくなると慢性的な鼻づまりに悩まされて呼吸が苦しくなるケースもあります。
また、鼻炎症状に伴って、鼻以外の部分に以下のようなさまざまな症状を伴うこともあります。(※首から上の症状が多いのが特徴)
耳……耳の奥がかゆい
のど……イガイガ感、かゆみ、乾燥による痛み
目…かゆみ、充血、涙が出る
皮膚……肌荒れ、ヒリヒリ感、かゆみ
その他……頭痛など
アレルギー性鼻炎の場合、これらの不快な症状が長く続くため、精神面に与える影響も大きくなります。
つらい鼻づまりは、集中力を低下させ、仕事や勉強のパフォーマンスを大きく落としてしまうほか、イライラや憂鬱、疲労感を日常的に感じ、人付き合いが煩わしくなってしまうような場合もあります。
さらに、患者さんの中には、「鼻づまりが苦しくて寝付けない」「夜中に目が覚める」「眠りが浅い」など、不眠症状を訴える方も多く、日中ぼーっとしてしまうほか、強い眠気に襲われ、仕事や授業中に居眠りしてしまう場合もあります。
アレルギー性鼻炎の原因は?
アレルギー性鼻炎には、一年を通じて症状が続く「通年性」と決まった季節だけに症状が出る「季節性」があり、発症の原因(アレルゲン)はそれぞれ異なります。
≪通年性のおもな原因≫
・ダニ
・ハウスダスト
ハウスダストとは、室内のちりなどの混合物のことです。
成分のほとんどはダニですが、ペット(犬、猫、ウサギ、ハムスターなど)の毛や昆虫、真菌(カビ)なども含まれています。
≪季節性のおもな原因≫
・花粉
「花粉症」は季節性アレルギー性鼻炎の一つです。
花粉が飛ぶ時期だけに症状が出るのが特徴で、多くの場合、結膜炎やのどの炎症などを一緒に引き起こします。
花粉症患者が一番多いのは春ですが、春以外の季節に発症するものや、エリア限定で発症するものなど、日本国内だけでも約60種類の花粉症があります。
春……スギ、ヒノキなど
夏……カモガヤ、スズメノカタビラなど
秋……ブタクサ、ヨモギなど
・発症のメカニズム
通年性、季節性ともに、アレルギーの発症には、体内に入った異物(抗原)を排除しようとする身体の「免疫システム」が深く関係しています。
鼻から入ってきたハウスダストや花粉などを異物と判断した身体は、それを体外に出すため、体内に「IgE抗体」という抗体を作り出し、鼻の粘膜にある肥満細胞にくっついて、「ヒスタミン」「ロイコトリエン」「トロンボキサン」といった化学物質を放出します。
それらの化学物質が神経や血管などを刺激することで、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状を起こし、異物を外に排出して体内に取り込まないようにします。
この免疫の働きは、「抗原抗体反応(こうげんこうたいはんのう)」と言うもので、本来、身体を守るために備わっているのですが、アレルギー性鼻炎の方の場合、作用が過剰に起こり、症状が強く出るため、不快な鼻炎症状などに悩まされるようになります。
アレルギー性鼻炎のおもな検査とは?
アレルギー性鼻炎の疑いがある場合、発症の原因を特定するために以下のような検査を行い、総合的な結果から診断を行います。
①問診
症状や発症した時期、アレルギーの有無(アトピー性皮膚炎やぜんそくなど)、家族にアレルギー性鼻炎の人がいるかなどを詳しく聞き取ります。
②鼻鏡検査
専用のスコープで、鼻の粘膜の状態を確認します。
通年性アレルギーの場合、鼻の粘膜は白く、全体的に腫れていて透明の鼻水がみられます。
同時に、副鼻腔炎や鼻茸(はなたけ)、鼻中隔弯曲症、急性鼻炎など、他の病気があるかどうかの確認も行います。
③アレルギー検査(血液検査、鼻汁好酸球検査)
鼻炎症状の原因がアレルギーによるものかを判断するための検査です。
アレルギー性鼻炎の場合、白血球の一種である好酸球(こうさんきゅう)という細胞が増えることが分かっているため、この検査では、鼻水を採取し、好酸球の量を測定します。
血液検査の場合、アレルギーの発症と関係の深いIgE抗体の値を測る検査も行います。
④アレルゲン特定検査(皮膚テスト、特異的IgE抗体検査、鼻粘膜誘発検査)
鼻炎の原因が、アレルギーによるものと確認された場合、そのアレルギーの原因(アレルゲン)を突き止めるため、以下のような検査を行います。当院では、特異的IgE検査(血液検査)のみを実施しています。
・皮膚テスト……皮膚にアレルゲン候補となるものを付け、皮膚の反応を見る検査
・特異的IgE検査……血液中のIgE抗体がどのようなアレルゲンに反応するかをみる検査
・鼻粘膜誘発検査……鼻の粘膜がどのようなアレルゲンに反応するかをみる検査(ただし、現在検査キットがあるものはハウスダストとブタクサのみ)
アレルギー性鼻炎の治療の種類
アレルギー性鼻炎の治療には様々なものがあります。
基本的に体質に関わるものなので、自然に治ることはほぼありません。完治させるというよりは、「症状が多少あっても日常生活に支障がなく、薬が必要ない状態を保つこと」を目標に、治療で症状をコントロールし、うまく付き合っていくことが大事です。
①薬物療法
アレルギー性鼻炎の薬はたくさんの種類があり、内服薬だけでなく、目や鼻に局所的に使用するネブライザーや点鼻薬、点眼薬などの薬もあります。
従来の薬は、眠気や口が乾くなどの副作用が多いというデメリットもありましたが、最近では、副作用が少ない身体に優しい薬がたくさん開発されていて、治療が行いやすくなっています。
鼻水やくしゃみがひどいのか、鼻づまりがひどいのかなど、患者さんによって症状が違うため、鼻炎のタイプや重症度によって以下のような薬を使い分けます。
・抗ヒスタミン薬……鼻水を抑える作用
・抗ロイコトリエン薬……鼻づまりを改善する作用
・ステロイド薬……炎症を抑え、鼻水、鼻づまり、くしゃみを改善する作用
※ほかの治療薬との飲み合わせが悪い場合などは、効き目がマイルドで、体質を改善する作用がある漢方薬を使用する場合もあります。
(参考)ネブライザー治療の様子
②手術療法
鼻づまりの症状が強く、薬物療法だけでは改善しない場合には、手術療法を検討する場合もあります。
鼻の粘膜(下鼻甲介)にレーザーなどを当て、アレルギーの炎症を起こしている部分を焼く手術があります。
当院では、炭酸ガスを使用したレーザー治療を行っております。
(※馬込院でのみ行っています。)
治療時間はわずか10分程度(麻酔込みで1時間程度)で、健康保険が適用できます。
(参考)当院で使用している炭酸ガスレーザー治療器
③アレルゲン免疫療法
アレルゲン(抗原)のエキスをごく薄い濃度から体内に入れて少しずつ体に慣らし、アレルギー反応を起こりにくくする治療です。
減感作療法(げんかんさりょうほう)とも言われ、たくさんある治療の中でも、アレルギー性鼻炎を唯一、完治させる可能性があり、ダニ(ハウスダスト)・スギ花粉ともに約80%の方に有効と言われています。
免疫療法には、「皮下免疫療法(ひかめんえきりょうほう)」と「舌下免疫療法(ぜっかめんえきりょうほう)」の2種類があり、どちらも保険適用できますが、現在では副作用の観点から舌下免疫療法が主流となっています。
・皮下免疫療法
(方法)アレルゲンを混ぜた液(少しずつ濃度を上げていく)を注射で注入します。
(メリット)飲み忘れの心配がなく、医師が実施するので安心。
(デメリット)注射の痛みがあり、時に重い副作用が出ることがあります。2年以上、通院が必要になります。
・舌下免疫療法
(方法)一日一回、自宅で舌の下に治療薬を入れます。
スギ花粉症は1種類、ダニアレルギーでは2種類の治療薬が開発されています。
(メリット)自宅で行うことができ、注射のような痛みがない。副作用が少ない。
(デメリット)毎日行う必要があり、効果が出るのに数年単位の時間がかかる。飲み忘れの心配がある。
よくあるご質問
1)日常生活にどんな影響が出ますか?
アレルギー性鼻炎は、一度発症すると、アレルゲンがなくならない限り、不快な鼻炎症状が続きます。
止まらない鼻水や鼻づまりで仕事や勉強に集中できず、思考力、記憶力が大きく低下するほか、夜間の鼻づまりで不眠状態になり、慢性的な日中の眠気を感じることも多く、イライラや落ち着きがなくなるなど、生活全般に大きな影響を及ぼします。
また、鼻が通らず口呼吸になってしまうため、喉の乾燥や痛み、かゆみ、頭痛などを引き起こし、風邪などのウイルスに感染する可能性も高くなるので、適切な治療を受けて症状をコントロールすることが大切です。
数字はずらして先頭にしてください。アレルギー性鼻炎を治療しないと、勉強や仕事への集中が低下し、イライラしやすくなり、落ち着きがなくなることを記載してください。
2) アレルギー性鼻炎に急になることはありますか?
はい、アレルギー性鼻炎は突然発症することがあります。
花粉、ダニ、カビなどのアレルゲンに初めて触れたときに発症することが多いですが、それまで症状がなくても、繰り返しアレルゲンに触れることで発症することもあります。
症状は鼻水、鼻づまり、くしゃみ、目のかゆみなどですが、重症になると呼吸困難や喘息などの症状が出ることもあります。
アレルギー性鼻炎は完治することは難しいですが、適切な治療を受けることで症状をコントロールすることができます。
3)アレルギー性鼻炎は遺伝しますか?
アレルギー体質は遺伝することが多いので、親や兄弟などの家族にアレルギー持ちの方がいる場合、アレルギー性鼻炎を発症するリスクも高いと言えるでしょう。
ただし、遺伝ですべてが決まるというわけではなく、発症する原因や症状、発症時期には個人差があり、食事や生活環境、ストレス、疲れなど様々な要因が複雑に絡み合って発症します。
5)アレルギー性鼻炎は何歳から発症しますか?
アレルギー性鼻炎の発症は、幼児期から徐々に増加し、学童期から思春期にかけて患者数がピークになります。
近年では発症の低年齢化が進み、これまでは少なかった子供の花粉症も増加していて、耳鼻科を受診されるお子さんは6歳前後から急に増えてきます。
2003年(平成15年)に行われた日本耳鼻咽喉科学会・学校保健委員会の調査では、アレルギー性鼻炎の発症率は小学生が9.3%、中学生が11.1%という結果が報告されています。
6)アレルギー性鼻炎は予防できますか?
予防には、アレルゲンを寄せ付けないことが何よりも大切です。
花粉症の場合、花粉が飛散する時期にはマスクやゴーグルを着用する、洗濯物を外に干さない、風が強い日や晴れた日は外出を控える、家に入る前に花粉を払い落とすなどの対策を行いましょう。
ダニやハウスダストなどが原因の場合、こまめに部屋の掃除や換気を行い、ダニの温床になりがちなカーペットはやめてフローリングにするなど、生活環境の見直しは必須です。
また、どちらのタイプの場合でも、体調を崩すとアレルギー症状も悪化しやすいので、日頃から規則正しい生活を心がけ、疲れやストレスを溜めないようにすることも大切です。
7)風邪と花粉症の区別が難しいです……。
アレルギー性鼻炎の症状は、ウイルスが原因で発症する風邪の初期症状と似ていますが、発症後の経過には違いがあります。
≪風邪の場合≫
・くしゃみや鼻水の症状は1週間~10日程度で回復する
・徐々に膿のような鼻水に変わる
・せきやたんなどを伴うことが多い
・38℃を超える熱が出ることがある
・下痢などの胃腸症状を伴う場合がある
≪花粉症の場合≫
・くしゃみや鼻水の症状が2~3ヶ月続く
・さらさらとした透明の鼻水が出続ける
・目のかゆみや充血が強い
・平熱もしくは微熱程度で高熱が出ることはない
ただし、風邪やインフルエンザの流行するシーズンだと判断が難しいことも多いので、自己判断せず医療機関で診察や検査を受けることをおすすめします。
8)妊娠中または授乳中のアレルギー性鼻炎に治療方法はありますか?
妊娠中や授乳中の治療は、赤ちゃんへの影響を考えて慎重に行わなければなりません。
妊娠初期(15週まで)は、赤ちゃんの体の器官が形成される重要な時期なので、薬を使わずにできる対症療法(温熱療法、蒸しタオル、入浴)を行い、さらに、こまめな掃除やマスクの着用で、できるだけアレルゲンを近付けないようにしましょう。
妊娠5カ月以降や授乳中の場合、症状によっては医師の判断で、安全性の高い薬を使うこともあります。
ただし、内服薬は、血液を通して成分が赤ちゃんに移行してしまうため、鼻に直接使用する薬(鼻噴霧用抗ヒスタミン薬、鼻噴霧用ステロイド薬など)を少量使う程度にとどめます。
また、舌下免疫療法は、まだ妊娠中の安全性が確立されていないので、妊娠中もしくは妊娠の可能性がある場合には行いません。
同様に、手術による治療も妊娠中には行いません。
(※皮下免疫療法の場合、妊娠中に治療を始めることはありませんが、既に治療を始めていて、効果を維持するための治療は可能です。)
まとめ
アレルギー性鼻炎は、不快な症状が続くため、学業や仕事など、患者さんの生活の質(QOL)を大きく下げてしまいます。
この10年というもの、アレルギー性鼻炎の患者数は年々増加しており、2008年に行われた全国調査では国民の4割(39.4%)に上るという報告もあります。
まさに日本人の国民病とも言えるアレルギー性鼻炎ですが、適切な治療を行えば、日常生活に支障がないレベルに症状をコントロールすることは可能です。
風邪を引いていないのに、いつまでも鼻水が止まらないなどの鼻炎症状が続く方は、一度、耳鼻咽喉科で検査を受けてみると良いでしょう。
当院でも、日々、多数のアレルギー性鼻炎の検査・治療を行っております。特に舌下免疫療法を希望される患者さんが多く来院されます。
ぜひお気軽にご相談ください。
鼻の病気
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スギ花粉の舌下免疫療法
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慢性副鼻腔炎
慢性副鼻腔炎は後鼻漏以外に頭痛・頭重感を伴うことがあります。原因はアレルギー・虫歯・カビがあり検査が必要になります。検査は内視鏡検査やCTにて診断します。治療は鼻処置を行い、抗生剤などを併用。症状によって漢方薬を併用します。自然治癒することもありますが、治らない場合は手術になることがあります
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