一般的に、5~6歳までの睡眠中の尿失禁を「おねしょ」、5~6歳(小学校入学前後)を過ぎて月1回以上のおねしょが3か月以上続いている場合を「夜尿症(やにょうしょう)」と区別しています。
おねしょは、お子さん・親御さんにとって「人には言えない・隠しておきたい病気」のひとつかもしれませんが、実は多くのお子さんが悩んでいる病気でもあります。
日本泌尿器科学会によれば、7歳児の夜尿症の有病率(病気がある人の割合)は、約10%です。特に治療をしなくても、成長に伴い毎年約15%ずつ自然に治るとされる一方で、数%程度のお子さんは20歳になるまでに自然治癒しないとされています。
おねしょ・夜尿症の主な原因は、覚醒障害・膀胱の働きの未熟・夜間多尿などが重なることです。親の育て方や子供の性格が原因で起こっているものではなく、根性論でどうにかなる問題ではありません。
おねしょが自然に治るタイミングは一人ひとり異なりますが、小学校に入学しても夜尿症が自然に治らない場合には、一度医療機関を受診されるとよいでしょう。
夜尿症治療は生活指導を中心に行い、必要に応じて薬物療法なども併用して進めます。自然治癒と比べて2~3倍治癒率が高まり、治癒期間の短縮も期待できます。
おねしょの心配・不安がありましたら、お気軽にご相談ください。
「おねしょ」と「夜尿症」は、どちらも「寝ているときに尿失禁(お漏らし)をすること」を意味しています。おねしょをした「年齢」によって大まかに区別されます。
腎臓で作られたおしっこは、尿管を通って膀胱(ぼうこう)に溜められます。
そして、膀胱はある程度いっぱいになると、収縮して反射的に排尿されます。
赤ちゃんは膀胱自体も小さいので、一日20回以上排尿することもあります。
(図)排尿のしくみ
成長に伴い、神経を通じて膀胱から大脳へ尿が溜まった合図(尿意)を伝達して、大脳から膀胱へ排尿指令を出せるようになると、「トイレまで我慢する」など排尿をコントロールできるようになります。
体の成長に加えて、こうした神経および大脳の成長は2~3歳頃から始まり、5~6歳頃になると、多くのお子さんである程度の排尿コントロールが行われるようになります。
おねしょと夜尿症の違いは、一般的に排尿機能が整ってくる時期「小学校入学前後」かによって区別されています。
(図)おねしょと夜尿症の区別
さらに、夜尿症診療ガイドライン*1では、夜尿症を次のように定義しています。
*1(参考)夜尿症診療ガイドライン2016 P.2|日本夜尿症学会
そのため、小学校入学後も頻繁におねしょが続いている場合には、排尿メカニズムに何らかの問題が発生している可能性があります。
「夜尿症」は、次の3つのタイプに分かれます。
タイプによって、治療法がやや異なります。
乳幼児期の「おねしょ」と学童期以降の「夜尿症」では、主な原因が異なります。
また、夜尿症に繋がる「病気」が原因となっている場合もあります。
成長に伴い、自然とおねしょが治っていくことも多いです。
夜尿症の要因となる病気には、次のようなものがあります。
てんかん、睡眠時無呼吸症候群のほか、便秘症、神経精神疾患(注意欠如・多動性障害など)、学習障害なども夜尿症を引き起こす可能性があります。
お子さんの年齢とおねしょの頻度から、おねしょ・夜尿症の治療タイミングを図ることができます。目安となる治療タイミングは次の通りです。
※以下はあくまで「目安」なので、お子さん・親御さんの悩みが強い場合には、すみやかに医療機関を受診されることをおすすめします。
(図)おねしょ・夜尿症の受診目安
おねしょが小学生まで続いていたら、一度ご来院いただくことをおすすめします。
夜尿症のお子さんの約5%に泌尿器科的疾患、内分泌疾患、脊髄疾患や精神疾患を持っていることが分かっているため、病気による夜尿症かどうかを慎重に診察します。
問診では、「6か月以上夜尿が止まっていた時期はあるのか?」「昼間のお漏らし(ちびる・軽い尿漏れ)はあるか?」「寝ているときに起こして排尿させているか?」、夕食の時間、就寝時間などの生活習慣、家族歴についてお伺いします。
夜尿症の分類に関わらず、糖尿病・尿崩症・尿路感染症のスクリーニングのために行います。
疾患が夜尿症の原因ではないことが確認できたら、夜間尿量の測定や膀胱容量の測定を行います。
夜間容量は、「濡れたオムツの重さ-オムツ自体の重さ+朝一番の尿」から算出できます。
そのほか、必要に応じて、超音波検査などを行います。
夜尿症が続くと、お子さんの生活の質(QOL)が悪化する可能性が指摘されています。
夜尿症治療では、まずは生活習慣を見直して「夜尿症になりやすい環境の改善」を数か月行います。それでも効果が乏しい場合には、薬物療法を併用します。
夜尿症のお子さんの多くは、「恥ずかしい」「悪いことをしている」「困らせている」など自尊心が深く傷ついています。
また、お子さんの夜尿症が続くと、親御さんの手間や心労も増えていることでしょう。
しかし、お子さん・親御さんともに責めても、誰も救われません。
夜尿症治療では、次のポイントが大切です。
夜尿症治療の中心となるのは、お子さん本人の「治したい」という気持ちです。
加えて、親御さんの「優しいサポート」が夜尿症治療には必要不可欠です。
夜尿症治療の基本となるのが、「生活習慣の見直し」です。
規則正しい生活リズムで過ごすようになると、約20~30%のお子さんのおねしょが改善されるとしています。
治療に伴う約束が守れたとき、夜尿をしなかったときなどは、たくさん褒めてあげましょう。
できたときはシールを貼ってよいなどのご褒美を作ると、お子さんの自己肯定感を高めつつ、お子さん自身も前向きに治療に取り組めるのでオススメです。
生活習慣の見直しを行っても改善がみられなかった場合には、薬物療法を併用して行います。
夜尿症治療では、次のお薬からお子さんに合わせて使用します。
パンツに水分を察知するセンサーを付けます。おねしょをするとアラームが鳴り、おねしょをした瞬間を本人に認識させることにより、睡眠時の貯尿量が増え、夜尿回数や量の減少が期待できます。3か月で約60%のお子さんに有効とされています。
病院では、おねしょの様子やお子さんの日常生活について伺います。
次のようなことが分かるメモを持参すると、診察に役立ちます。
(参考)下記のサイトでは、受診の相談カードやおねしょダイアリーなど夜尿症(おねしょ)治療に便利な資料がダウンロードできます。
◆「おねしょ卒業プロジェクト」
親御さんは「怒らない・寝ているところを起こさない・焦らない」でください。
親御さんの不安・ストレスは、知らず知らずにお子さんにも伝わります。
結果として、お子さんの精神的ストレス・自尊心の低下に招き、生活の質が低下して、より夜尿を引き起こしてしまう可能性が高まります。
お子さんもおねしょをしたくて、している訳ではありません。「朝の忙しいときに、もう!」と思うこともあるかもしれませんが、そんな時こそ「焦らず、怒らず、落ち着いて」対応して、お子さんには「おねしょは治るもの」と安心させてあげてください。
とはいえ、夜尿症に対して不安や心配がありましたら、当院までお気軽にご相談ください。
まずは事前に、ご家族と学校関係者など宿泊行事責任者の方との連携を図ることが大切です。
宿泊行事まで1か月以上ある場合には、すみやかに医療機関に相談しましょう。それまでに夜尿回数を減らせる可能性があります。
もし、1か月未満であれば、すぐに生活習慣や行動を見直すようにして、医療機関を受診して相談することとおすすめします。
また、宿泊当日は「夕飯後~寝るまでの水分摂取を控える」「寝る前に必ずトイレに行く」ことを注意するだけでも、おねしょをしなかったというケースは少なくありません。
さらに、「おねしょパンツを履いておく」などの対策を取っておくと、より安心です。
いずれにせよ、心配事があれば、学校の先生にあらかじめ伝えておくことが重要です。
お薬はあくまで治療をサポートする位置づけであり、お薬だけ飲めば治癒するとは限りません。
夜尿症治療の基本となるのは「生活習慣の見直し」です。
生活習慣の改善をきちんと行わなければ、薬物療法の効果も十分に得られません。
ご本人・ご家族がいっしょに治療を取り組むことが重要です。
また、お薬の併用でおねしょがなくなっても一定期間は服用を続け、少しずつ減らして中止するようにします。
お子さんの生活環境・体質など状況によって治療効果は異なります。 一般的には、半年~1年くらいかけて、少しずつ改善を目指します。
5歳を過ぎても月1回以上のおねしょが3か月以上続く場合には「夜尿症」という病気として判断します。
病院を受診せずにご家庭で様子見をされているお子さんも含めると、夜尿症の患者さんは約80万人に上ると推定されています*3。
*3(参考)ガイドラインに基づいた最新の夜尿症診療 P.20
夜尿症の主な原因は夜間多尿や膀胱容量の問題であり、約5%のお子さんで病気が原因となります。
学童期以降も夜尿症が続くと、次第に自尊心の喪失、不安感など精神面への影響が大きく、生活の質(QOL)の低下を引き起こします。
一方、お子さんだけでなく、親御さんのストレス・不安も募り、親子関係に悪影響を及ぼすこともあります。
小学校入学までおねしょが続いている場合には、一度医療機関にご相談されることをおすすめします。
生活・行動改善の指導を中心に治療を開始することにより、自然治癒と比べて、治癒率を約2~3倍高め、治癒期間も短縮するとされています。
当院では、まずはお子さんの生活習慣やおねしょの状況をしっかり調べ、背景に病気がないかを確認しています。その上で、生活習慣に対するアドバイスを行い、必要に応じて、適切なお薬を使います。夜尿症治療ではお子さんの治療に対するポジティブな気持ちと親御さんのサポートが大切です。「怒らず・起こさず・落ち着いて」いっしょに頑張りましょう。