のどの痛みは、のど粘膜に炎症が起こり、神経が刺激されることで発症します。
のどには、咽頭(いんとう:鼻の奥から食道の入り口までの部分)と喉頭(こうとう:のどぼとけ周辺部分)という2つの部分があり、さらにのどの入り口左右にある「扁桃(へんとう)」という部分の炎症でも痛みが生じます。
のどの使い過ぎや空気の乾燥といった物理的ダメージで痛みが出る場合もありますが、感染症などの病気が原因で痛みが起きることが多く、最近では、アレルギーによる発症も増えています。
軽症であれば自然に治ってしまうこともありますが、中には、つばを飲み込むのもつらく、食事がまったく摂れなくなってしまうケースや、至急治療をしないと命に関わるようなケースもあるため、異常を感じた時には、早めに検査を受け、適切な治療を開始することが大切です。
のどの痛みの原因とおもな病気
のどの痛みを起こす原因やおもな病気には以下のようなものがあります。
細菌やウイルス感染による痛み
・急性上気道炎(風邪)
のどの痛みの一番多い原因であり、いわゆる一般的な風邪です。
鼻やのどから風邪の原因となる病原体(ライノウイルス、コロナウイルスなど)が侵入すると、ウイルスを撃退しようとして白血球の働きが活発になるため、咽頭や喉頭に炎症が起こり、赤く腫れて痛みが出ます。頭痛や発熱、咳や鼻水を伴うこともあります。
・インフルエンザ
インフルエンザウイルスが原因で、おもに冬に流行する感染症です。
鼻水やのどの痛みのほか、38℃以上の高熱や頭痛、筋肉痛、関節痛といった全身症状も伴い、重症化すると肺炎を起こすこともあります。
・アデノウイルス感染症(プール熱)
アデノウイルスが原因で、おもに冬から夏にかけて流行する感染症です。
プール熱もしくは咽頭結膜熱(いんとうけつまくねつ)とも言われ、強いのどの痛みのほか、発熱や結膜炎、頭痛を伴うのが特徴です。
・ヘルパンギーナ
コクサッキーウイルスなどが原因で、おもに夏に流行する感染症です。
口の中に小さな水ぶくれが多数できて、のどの強い痛みを伴います。特に乳幼児の発症が多いのが特徴です。
・溶連菌感染症(急性扁桃炎)
溶結性連鎖球菌(ようけつせいれんさきゅうきん)という細菌が原因で、小さなお子さんに多く発症する感染症です。
扁桃が炎症を起こし、腫れてのどに強い痛みが出るほか38℃以上の高熱、倦怠感、関節痛、嘔吐といった症状が起こります。
舌にイチゴのようなぶつぶつが現れ、手足に小さな赤い発疹が出ることもあります。
・扁桃周囲膿瘍(へんとうしゅういのうよう)
扁桃の炎症が悪化し、扁桃の周辺一帯が大きく腫れ、膿が溜まります。
のどの強い痛みで、口が開けられなくなるほか、食事が摂れなくなってしまう場合もあり、痛みが耳に広がる場合もあります。
・急性喉頭蓋炎(きゅうせいこうとうがいえん)
おもにインフルエンザ菌という細菌(インフルエンザウイルスとは異なる)が原因で発症する感染症です。
外から取り込んだ空気と食べ物の通り道を切り替える「弁」の役割をしている「喉頭蓋(こうとうがい)」に炎症が起こり、強烈なのどの痛みや発熱を伴います。
喉頭蓋の腫れにより、空気や食物の通り道が狭くなるため、呼吸が苦しくなり、窒息する危険性もあります。
腫瘍による痛み(良性、悪性)
のどの粘膜に、良性もしくは悪性の腫瘍(できもの)ができ、まわりの神経を刺激してしまうことで痛みが起こることがあります。
また、できもの表面の粘膜が荒れて痛みが出る場合もあります。
アレルギーによる痛み
花粉やダニ、ハウスダストなどのアレルギーで鼻炎症状が続くと、炎症がのどに広がって痛くなる場合があります。
また、のどに直接花粉が入り込んでしまい、痛みが出る場合もあります。
異物による痛み
小さなお子さんに多く見られる症状で、魚の骨や小さなおもちゃなどを誤って飲み込んでしまい、のどの粘膜に傷が付くことで痛みが出ることがあります。
のどの痛みの原因を調べるおもな検査とは?
のどの痛みの原因を調べるおもな検査には以下のようなものがあります。
問診、視診
医師が発症時期や症状を詳しく聞き取り、口の中の状態(赤みや腫れ具合)を確認します。
迅速診断キットによる検査
のどの痛みが出る感染症の中でも、インフルエンザや溶連菌感染症は、専用の簡易検査キットが開発されています。
のどのぬぐい液から、10分程度で簡単に感染の有無を調べることができます。
内視鏡検査
局所麻酔をした後、鼻から内視鏡を入れ、モニターに映し出された画像で、のどの状態(炎症の具合や腫瘍の有無)を観察します。
超音波エコー検査
超音波でのどの内部の状態(腫瘍の有無など)を調べる検査です。ゼリーを塗った上から端末をあてるだけで、痛みもないため、気軽に行うことが可能です。
※上記以外にも、詳しい検査の必要がある場合には、画像検査や血液検査などを行う場合もあります。
のどの痛みを伴う病気の治療法
のどの痛みを緩和するには、原因となる病気をしっかりと治療することが肝心です。
治療の方法は、おもに感染症による辛い症状を緩和するための「薬物療法」と、腫瘍や炎症を取り除くための「外科的治療」の大きく2つに分けられます
薬物療法
痛みの元となるそれぞれの病気に適した内服薬を処方します。
・ウイルス性の感染症の場合
ウイルスを殺す薬はないため、おもに消炎鎮痛剤(のどの炎症を抑え、痛みを緩和する)などによる対症療法を行います。
※ただし、インフルエンザの場合は、抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザなど)を使用します。
・細菌性の感染症の場合
消炎鎮痛剤のほか、細菌の増殖を抑える抗生物質による治療を行います。
・アレルギー性の場合
消炎鎮痛剤のほか、アレルギーの症状をコントロールして症状を出にくくする抗アレルギー薬による治療を行います。
さらに当院では、上記のような内服薬の治療と並行して、直接鼻やのどに作用するネブライザー治療(霧状にした薬を吸い込み炎症を和らげる)も行いますので、効果的にのどの痛みを和らげることが可能です。
外科的治療
薬物療法では改善しない以下のような病気の場合、外科的治療が必要になります。
・扁桃周囲膿瘍……粘膜を切開して膿を出す処置を行います。
また、扁桃炎や扁桃周囲膿瘍を何度も再発を繰り返すような場合、扁桃自体を取る手術を行うこともあります。
・急性喉頭蓋炎……呼吸困難の症状がある場合には、緊急で気管を切開して、呼吸ができるようにするための処置を行います。
・腫瘍(良性、悪性)……状態に応じて薬物療法のほか、腫瘍摘出手術を行います。
・のどの異物……つまった異物を特殊な器具で慎重に取り除きます。
(参考)異物を取り除くための鉗子付きファイバー
よくあるご質問
1)いつものどから風邪をひいてしまうのはなぜでしょうか?
口呼吸をしている人は、口の中が乾燥してしまい、ウイルスも侵入しやすくなるため、風邪を引きやすい傾向があります。
発症予防には、日頃から鼻で呼吸することを心がけるとともに、バランスの良い食事や、十分な睡眠、適度な運動で免疫力を高めておくことも大切です。
2)のどの痛みで、受診したほうが良いのはどんな時ですか?
痛みや違和感、声のかすれが長く続く場合や、強い痛みで食事や水分が取れないような場合は治療が必要です。また、高熱や呼吸が苦しいといったのど以外の症状がある時も重症化する恐れがあるので早めに受診しましょう。
3)のどの痛みを予防する方法はありますか?
がんのリスクを高める喫煙や過度の飲酒を控えるのはもちろん、のどの健康のためには日頃からのどに優しい生活をすることも大切です。
「大きな声を出す」「長時間のカラオケ」といった、のどを酷使することは、痛みの原因になりますし、辛すぎる食べ物や、熱すぎる、冷たすぎる飲み物も、のど粘膜の刺激になるため、なるべく控えましょう。
そのほか、こまめな「うがい」や水分補給、マスクの使用や部屋の加湿で適度な潤いを保ち、のどをいたわるようにしましょう。
まとめ
のどには、外から取り込んだ空気を肺に送る働きと、食べた物を食道に送る働き、そして声を発するという、3つの大切な働きがあるため、一度炎症が起こると、日常生活にも大きな影響を及ぼすことがあります。
のどは、外からの刺激を受けやすい部位だけに、痛みや違和感も出やすいのですが、のどの奥の状態を自分の目で見て確認することはできないため、小さなことでも何か異変がある時は、早めに耳鼻科医の検査を受けることをおすすめします。