鼻の病気

ダニアレルギー(ハウスダスト)の舌下免疫療法

ダニアレルギー(ハウスダスト)の舌下免疫療法

「通年性アレルギー性鼻炎」は、主にダニなどハウスダストが原因となるアレルギー疾患で、お掃除の時やほこりの多い場所で、急に鼻がムズムズして、くしゃみが止まらなくなったり、サラサラな鼻水がダラダラ出てきたりする症状が見られます。

鼻アレルギー診療ガイドライン(2016年)の中でも、日本人の約23%が「通年性アレルギー性鼻炎」を持っていると公表されています。当院のある大田区でも約14万人が、馬込地区でも約1.3万人が悩まれている国民病になっています。

当院では、「通年性アレルギー性鼻炎」の治療として、薬物療法やレーザー治療のほかに、アレルギーに体を慣らすことで完治する可能性のある「舌下(ぜっか)免疫療法」を行っています。

「ダニアレルギー(ハウスダスト)の舌下免疫療法」は、1日1回、薬を舌の裏に1分置いてから飲み込むだけでよいので、自宅で手軽に行え、副作用が注射による免疫療法よりも少ない特徴があります。
2018年からはお子さんも保険診療で治療可能となりました。当院では6歳から治療しています。

ダニアレルギーによるつらい鼻炎症状でお悩みの方、薬で症状が抑えられない方、舌下免疫療法にご興味をお持ちの方は、お気軽に当院までご相談ください。

ダニアレルギー(ハウスダスト)の舌下免疫療法について

「アレルゲン免疫療法」とは?

「アレルゲン免疫療法」とは、病気となる原因(アレルゲン)を少量から少しずつ増やしながら体内に取り込み、3~5年程度続けることで、アレルゲンに反応しない体質に改善させる可能性がある治療法です。

日本では、舌下摂取(舌の裏に置いて、しばらく経ってから飲み込むこと)よりも先に、1960年代から注射によってアレルゲンを取り込む「皮下免疫療法」が行われていました。
「アレルゲン免疫療法」は、皮下注射・舌下摂取ともに、「スギ花粉」「ダニアレルギー」の治療で行われています。

「ダニアレルギーの舌下免疫療法」の治療方法

「ダニアレルギーの舌下免疫療法」は、皮下注射でのデメリットとなっていた頻回の定期通院や痛みを改善した新しい方法です。

1日1回、薬(ダニ抽出エキスの錠剤)を舌の裏に1分置いてから飲み込みます。

舌の裏には毛細血管がたくさんありますので、すぐ飲み込むよりも薬の有効成分が多く体内に吸収されます。

なお、治療薬はラムネのように唾液ですぐに溶けますので、濡れた手で触らないようしましょう。苦みのないお薬なので、小さなお子様でも服用が可能です。

また、治療の前後2時間は激しい運動や入浴など血流や血圧の変動があるような行動を避け、飲み込んだ後も5分程度はうがいや飲食を避ける必要があります。

「ダニアレルギーの舌下免疫療法」で使われる治療薬

ダニアレルギー舌下免疫療法では、2種類の錠剤が承認されており、どちらもヤケヒョウヒダニとコナヒョウヒダニが50%ずつ含まれていて、効果には大きな違いはありません。
当院では、より錠剤崩壊が速く(約10秒で溶ける)、導入時(初回~1週間)に薬の増量がなく服用が簡単なお薬を採用しています。

「無味無臭」なので、お子さんでも服用できます。

ダニアレルギー(ハウスダスト)の舌下免疫療法に向いている人


・一年中、くしゃみ・鼻水・鼻づまり症状のあり、症状が強く出る方
・薬では症状を抑えることができない方
・薬を止めると、症状が悪化する方
・薬の量を少しでも減らしたい方
・将来にわたって、アレルギー性鼻炎の症状に悩むのが心配な方
・薬による副作用(眠気など)が出やすく、仕事や日常生活に影響が出ると困る方
・妊娠を予定している方など、事情があってお薬が飲めない方
・毎日コツコツ服用を続けられる方

ダニが原因の気管支喘息の場合、鼻症状だけでなく、気管支喘息の症状も改善されるという報告もあります。

ダニアレルギー(ハウスダスト)の「舌下免疫療法」の実施時期

ダニアレルギーによる舌下免疫療法は、1年中いつでも始めることができます。

当院では、まず血液検査を行い、ダニアレルギーがあるかを診断してから治療開始となります。過去2年以内に他院で血液検査をしている方は不要になりますので、検査結果をお持ちください。検査結果を確認してから、舌下免疫療法が開始となります。

ダニアレルギー(ハウスダスト)の「舌下免疫療法」の治療の流れ

① 問診と視診

自覚する症状以外にも、アレルギー性疾患の有無、家族のアレルギー歴などについてお伺いします。
顕微鏡で鼻水を調べたり、鼻の粘膜の色や鼻水の性状、目の状態の観察を行ったりします。

② 血液検査

ダニアレルギーに対する免疫療法は、「ダニアレルギー」以外のアレルゲンには効果がありません。
そのため、事前に血液検査を行い、「ダニアレルギー」であるかどうかを確認する必要があります。
この血液検査では、同時に花粉などのアレルゲン反応するIgE(特異IgE)についても調べます。

③ 初回投与(病院で服用)

血液検査でダニアレルギーの「舌下免疫療法」の適応があった場合、治療を開始します。

初回のみ、クリニックで医師の確認の元、1錠服用します。
急激な副作用が出ないかを確認させていただくので、服用後30分程度、病院内でお待ちください。合計で1時間弱かかります。

④ 2回目以降の投与(自宅で服用)

2回目以降は、原則自宅にて1日1錠服用いただきます。
副作用があった際に対処できるよう、なるべく家族など人がいるところで服用しましょう。

初回から1週間(導入期)は、黄色ラベルの治療薬(3,300JAU錠)を1日1回服用し、1週間後(維持期)からは、ダニ抽出エキスが増量されたピンク色ラベルの治療薬(10,000JAU錠)に変わります。

⑤ 定期通院(2週間毎~1ヵ月毎)

治療開始からしばらくは1~2週間毎に通院していただき、副作用などのチェックを行います。

ダニエキスの用量も一定となる維持期に入り、治療が落ち着いてきたら、1ヵ月毎の通院となります。

よくある質問

1) 「舌下免疫療法」は毎日薬を服用しないと、いけないのでしょうか?

舌下免疫療法は、毎日の積み重ねが必要な治療です。うっかり忘れてしまったり、事情があって服用できなかったりする日もあるかもしれませんが、“できるかぎり毎日服用するよう、意識をもって取り組んでいただくこと”が、免疫療法の一番のポイントです。

何日も服用を忘れてしまったり、何度もすぐに飲んでしまったり(経口摂取)した場合には、効果がないだけでなく、安全面でも問題が生じる可能性があります。

2) ダニアレルギーの「舌下免疫療法」は、何歳でも受けられますか?

ダニアレルギーの舌下免疫療法は、特に年齢制限なく、お子さんでも治療いただけます。

しかし、舌下免疫療法では舌の裏に薬を置いてから、飲み込む必要があります。
すぐに飲んでしまうと、効果が減ってしまうため、治療の理解などから、当院では6歳以上が適応となると考えています。
さらに、治療開始前には採血によるアレルギー検査も必要なので、あまり小さいお子さんの場合は難しいでしょう。

また、高齢の方についても適応外ではありませんが、免疫療法が有効となる方の割合が少し減ってしまうことがあるため、医師とよくご相談ください。

3) 舌下免疫療法の適応とならない人とは、どのような人ですか?

重い心臓病の方、薬でコントロールされていない気管支喘息の方、がん治療中の方、妊娠中・授乳中の方は、原則お受けいただけません。
また、ステロイドの内服薬を常用されている方は、免疫療法の効果を下げる可能性があるので、治療をすることができません。

しかし、気管支喘息の方でも、薬で発作をコントロールして、喘息症状が出ていない場合には治療できます。
高血圧の治療でβ遮断薬を服用されている方もお薬を変更すれば、治療可能です。

4)治療効果はすぐに出ますか?また、どのくらい続きますか?

舌下免疫療法は、すぐに効果が出る治療ではありません。
少しずつアレルギーに体を慣らせ、体質を変えていく治療のため、日本アレルギー学会では、3年以上の治療を推奨しており、「年単位」でコツコツ続けていくことで、最大の効果が期待できます。

ただし、治療効果には個人差があり、ダニアレルギーの「舌下免疫療法」に対する有効率は約80%と報告されています。
正しく治療を行えば、アレルギー症状を治したり、治療終了後も長期間(7~8年程度)に渡って、薬を服用しなくても症状を抑えることができたり、もしくは症状を軽減させ、薬の量を減らすることが期待できます。

当院では、治療開始から1~2年で効果測定を行い、効果が確認できれば、合計4~5年間の治療をおすすめしています。

5)ダニアレルギーの「舌下免疫療法」の副作用はありますか?

ダニアレルギーの方に対して、ダニ抽出エキス剤を口の中に投与するので、口の中のかゆみ、イガイガするような違和感、腫れなど、口腔内に副作用が一番現れやすくなります。
また、くしゃみ・鼻水・鼻づまりといった鼻炎症状も出やすくなります。
その際には、抗ヒスタミン薬などを用います。

これらの副作用は、治療開始直後から1ヵ月くらいまでの間に出やすく、多くは短時間で軽減し、1週間程度で出にくくなります。

なお、アレルギーをお持ちの方がアレルゲンを服用するので、アナフィラキシーショックが起こる可能性もゼロではありません。
しかし、日本よりも以前から治療が行われていた海外においても、重篤な副反応は極めて稀で、ダニアレルギーの皮下免疫療法よりも安全とされています。

まとめ


ダニアレルギー(ハウスダスト)の「舌下免疫療法」は、ダニアレルギーが原因の「通年性アレルギー性鼻炎」を治すことのできる可能性がある唯一の治療法です。

舌下免疫療法は、“体質を変える”という目的に向かって、患者さんが主体となり、治療を進めていく形となります。
毎日、舌下での服用は大変な時もあるかもしれませんが、毎日少しずつ体にアレルゲンを取り込むことが“治療の肝”となるので、できるかぎり頑張りましょう。

また、治療期間も長くなりますので、服用方法や注意点などよく理解した上で治療を行うことが大切です。

もちろん、当院でも治療前に詳しくご説明させていただきますが、治療中・治療後も何か気になることや分からないことなどありましたら、必ず医師までご確認ください。

ひどい鼻づまりでお困りの方、薬を飲んでも症状を抑えられなかった方、舌下免疫療法が気になった方は、お気軽に当院までご相談ください。

記事執筆者

記事執筆者

馬込駅前あくつ小児科耳鼻咽喉科
院長 岩澤 敬

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 専門医
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 補聴器相談医
日本めまい平衡学会 めまい相談医

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西馬込あくつ耳鼻咽喉科
院長 阿久津 征利

日本耳鼻咽喉科学会 専門医
日本めまい平衡医学会 めまい相談医
臨床分子栄養医学研究会 認定医

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鼻の病気

  1. スギ花粉の舌下免疫療法

  2. 慢性副鼻腔炎

    慢性副鼻腔炎

    慢性副鼻腔炎は後鼻漏以外に頭痛・頭重感を伴うことがあります。原因はアレルギー・虫歯・カビがあり検査が必要になります。検査は内視鏡検査やCTにて診断します。治療は鼻処置を行い、抗生剤などを併用。症状によって漢方薬を併用します。自然治癒することもありますが、治らない場合は手術になることがあります

  3. アレルギー性鼻炎

    アレルギー性鼻炎

    ホコリや花粉など、特定の物質により、くしゃみや鼻水、鼻づまりなどの鼻炎症状が起きる病気が「アレルギー性鼻炎」です。

  4. 花粉症

    花粉症とは、スギやヒノキなどの花粉が原因となって起こるアレルギー疾患の総称で、花粉が飛散している時期にだけ発症する特徴があります。花粉症はアレルギー体質の人がなりやすく、日本アレルギー学会の調査によると、東京都では約34%がスギ花粉症と報告されており、当院のある大田区でも約24万人、馬込地区では約1.9万人の患者さんがスギ花粉症に悩まれています。

  5. 花粉症・鼻炎に対するレーザー治療

    鼻炎に対する治療には「薬物療法」のほかに、腫れている鼻粘膜を焼いて、アレルギー反応を抑える効果が期待できる「レーザー治療」もあります。

  6. ダニアレルギー(ハウスダスト)の舌下免疫療法

    「通年性アレルギー性鼻炎」の治療として、薬物療法やレーザー治療のほかに、アレルギーに体を慣らすことで完治する可能性のある「舌下(ぜっか)免疫療法」を行っています。

  7. 急性副鼻腔炎

    急性副鼻腔炎は、副鼻腔に炎症が起こり、粘りのある濁った鼻水や鼻づまりなどの症状が現れる病気で、頭痛や顔の痛み、歯の痛みなどを伴うこともあります。

  8. 蓄膿症(慢性副鼻腔炎)

    慢性副鼻腔炎は、粘りのある黄色い鼻水や鼻づまりが3ヶ月以上続く病気で、発症すると副鼻腔に膿が溜まることが多いことから、「蓄膿症(ちくのうしょう)」と呼ばれることもあります。

  9. 鼻血(鼻出血)

    鼻血がよく出る原因は、鼻をいじってしまう刺激が原因で起こります。軽症の場合、看護師から出血の止め方の指導をします。重症の場合は止まらない場合がありますので、電気メスで止血を行います。子供は鼻をよくいじるため出血を繰り返すことがあります。

  10. 嗅覚障害

    嗅覚障害(きゅうかくしょうがい)とは、人間が持つ五感の一つである「におい」を正確に感じることができなくなる状態です。