当院では栄養士の大塚さんにご協力いただき毎週栄養たっぷりのレシピをご紹介します✨過去のレシピに関してはこちらよりご覧ください。第10回目は第9回に引き続き「だし」についてなのですが、今回は昆布に注目しました。昆布は「喜ぶ」に通じる縁起物なのはよく知られています。 これは単なる語呂合わせではなく、栄養学的に見ても身体のために大変良い食材です。 現代の食生活では海外の食べ物も多くあるため、お肉を使った料理やライフスタイルの変化からファーストフード、加工食品を多く摂るようになりました。
人の身体は約60%が水分で、その体液には中性に近い「弱アルカリ性」で保たれています。健康維持には、酸とアルカリのバランスを保つことがとても大切です。しかし、体内では、栄養素の代謝に伴い、常に「酸」が作られています。そのため、腎臓では余計な酸を尿として身体の外に出しています。
しかし、食生活の偏りや酸性食品ばかりを摂取する生活を送っていると、身体が酸性に傾きがちになってしまいます。酸性に傾いてしまうと、けいれん・吐き気・しびれなどの体調不良が現れるといわれています。弱アルカリ性に保つためには、アルカリ性食品の中でもトップクラスの昆布を食べるのが一番です!
※酸性食品:肉類・魚介類・卵・穀類・砂糖
※アルカリ性食品:大豆製品・野菜・果物・海藻・きのこ
昆布と干し椎茸の水だし
だしの材料
昆布 5cm(3g)
干ししいたけ 15g(3個)
水 3カップ
だしの作り方
容器に昆布と干し椎茸を入れ水を注ぎ冷蔵庫に一晩(6時間以上)おく。
※冷蔵庫で8時間ほどおきました
※冷蔵庫で約1週間保存が可能です
昆布の種類
ワインはボルドー、ブルゴーニュなどに産地によって味が変わりますよね。昆布も産地別で個性があり違います。
どれも見た目は同じですが出汁に適した昆布、食用に適した昆布など用途が違うことをご存知でしょうか?
昆布は主に北海道沿岸から採取加工されていますが北海道全域で約90%採れます。北海道以外は、青森、岩手、宮城です。場所によって、産地のプランクトンや海流などの影響により採れる昆布にそれぞれの特徴があります。主な昆布の種類は真昆布、羅臼昆布、利尻昆布、日高昆布の4種類です。
■真昆布
昆布の王様とも言われています。厚みがあり幅が広いです。主に道南地方で採れます。だし汁は澄んでいて、上品な甘みと香りがあります。お吸い物、汁物などで使われます。関西で人気がある昆布です。形は幅広いうちわ方です。茶褐色と赤褐色の2種類があります。薄いですが口当たりが良くコクのある高級だしです。知床半島の根室側沿岸のみに生育しています。
■羅臼昆布
形は幅広いうちわ方で、茶褐色と赤褐色の2種類があります。薄いですが口当たりが良くコクのある高級だしです。知床半島の根室側沿岸のみに生育しています。
■利尻昆布
真昆布とよく比較されますが、やや小型で色は黒褐色です。今回紹介する4種類の出汁の中では1番繊維質の固い昆布です。主に利尻・礼文島と稚内周辺で採れます。クセがなく香りと旨みが強いだしです。京都の懐石料理などで使われます。
■日高昆布
幅が狭く、細長い昆布です。色は黒味を帯びた濃い緑色です。日高地方沿岸で取れます。薄く、繊維質が柔らかい昆布です。だしにはあまり向いていません。おでんの昆布としてよく使われます。
いろいろ種類がありますね。香りがよく緑褐色で、つやがある肉厚なものが良質ですが、家庭料理の場合はたくさんの具からも旨味が出るので、それほど高級品にこだわる必要はありません。
昆布の栄養
■食物繊維が豊富に含まれている
タンパク質や糖質も含まれますが、食物繊維がその全成分の3割以上を占めています。昆布を煮た時などに出てくる独特のねばり成分は「アルギン酸」や「フコイダン」といった海藻特有の水溶性食物繊維です。昆布は含有量は多く、乾燥重量の約10%と言われています。糖質や脂質の吸収を抑え、コレステロール値の上昇を抑えてくれます。フコイダンは、免疫力を高める作用も注目されています。また、小腸・大腸・すい臓の細胞が増え、たんぱく質を分解する酵素と糖質を分解する酵素の働きが活発になります。昆布を毎日食べつづけることで、消化力を強める可能性があるのです。
■ミネラルが豊富
カルシウム、鉄、ナトリウム、カリウム、ヨウ素(ヨード)などのミネラルは、体の組織を作ったり、調子を整えたりする大切な栄養素です。昆布と牛乳を比べると、ミネラルは牛乳の約23倍、カルシウムは7倍、カリウムは43倍、鉄分は39倍も含まれています。ヒトの身体に流れる血液やリンパ液は、海水の成分と似ていると言われています。海で育つ昆布は、海の中にあるミネラルを吸収して、人間に有害な物はあまり吸収しないという特徴があります。そのため、昆布のミネラルは体内への消化吸収率が高く、その約80%が体内に吸収されると言われています。
■抗酸化作用がある
海藻に含まれる褐色の色素成分フコキサンチンは脂肪の蓄積を抑え、体内の活性酸素を除去する強い抗酸化作用を持ち、血糖値を低下させる効果もあります。
■グルタミン酸が豊富
うまみのもととなるグルタミン酸が豊富です。胃にあるセンサーに作用して胃腸の働きを良くし過食を防ぐとともに、塩分濃度が低くても満足感を得られるので減塩することができます。脳の機能を活発にします。表面に白い粉がありますが、白い粉はマンニットと呼ばれるうまみ成分なので固く絞った布巾やペーパーなどでさっと拭く程度にしてください。水洗いはしません。
■ヨウ素が豊富
ヨウ素は、甲状腺ホルモンの原料になり、成長を促進する働き基礎代謝を活発にしてくれて美肌作り、疲労回復などの効果があります。また、風邪予防にもなります。受験生や小さなお子様をお持ちの方などは特に、日頃から風邪をひかない体力作りを心掛けたいですよね。
昆布に含まれるヨウ素は、人間の成長を促進し、新陳代謝を調節します。ヨウ素が極端に少なくなると、気力が衰えたり、疲れ易くなったりします。頻繁にのどの調子が悪くなる方やタンが切れなくて困っている方には「コンブ水」がおすすめです。
■アレルギーのために
年々増えつづけるアトピー性皮膚炎や花粉症でお悩みの方に朗報です。昆布には抗アレルギー成分がたっぷり含まれています。昆布の利方法として主に知られているのは「だし」ですが、昆布の抗アレルギー成分は脂質なので水やお湯にはほとんど溶け出しません。ですから、抗アレルギー成分を身体にとりこむには、だしではなく、昆布自体を食べることがポイントです。
■思考力のために
昆布には、ビタミンB1やB2がたっぷり。これらのビタミン類には疲労を回復してくれる働きがあります。疲れが溜まっていては思考力も鈍ってしまいます。また、昆布に含まれるアルギン酸は、頭の回転をよくする為には欠かすことができません。記憶力を保つといわれているDHA(ドコサヘキサエン酸)を多く含む食品と一緒に食べると効果が倍増します!
昆布と干し椎茸の水出しを使ったレシピ
先ほどご紹介しただしを使った「豚肉と昆布と干し椎茸の煮物」の作り方をご紹介します!
【栄養士からコメント】
昆布は、栄養面でも自然の恵がいっぱいで嬉しい食材です。干ししいたけに含まれた「だし」の旨み、お肉にもしっかり味が染みていて旨味が口いっぱいに広がり美味しかったです。
今回作っていたら、中学生の娘が「ママ、ひと口ちょうだい」といいながら私の分も食べてしまいました。
【材料】
豚バラ薄切り肉 300g
水だし後の干ししいたけ
水だし後の昆布
昆布と干ししいたけのだし 200ml
醤油 大さじ4
みりん 大さじ4
【作り方】
1、水だしに使った昆布と椎茸を取り出し、昆布は縦に細切りにする。干ししいたけは半分に切る
2、豚肉を3センチ幅に切る
3、しいたけ・昆布・豚肉を鍋に入れ、みりん、だしを入れる
弱火で20分ほど煮込む(時々、お肉をほぐしながら煮てください)
4,醤油を入れ全体を混ぜながら2分加熱したら完成!
まとめ
昆布と干し椎茸の水だし
だしを使った料理は難しそうなイメージがありますが、実はだしを用意しておくだけで、簡単に煮物など色んな料理に活用することができます。
そして何より嬉しいのは昆布には、人間の身体に欠かせない栄養素がたっぷり含まれていること。人間の体内では作ることができないミネラルやビタミン、食物繊維もたくさん入っています。
市販のだしではなく、自分でだしを取るだけで、料理上手になった気分になります。また、昆布に含まれているうま味成分のおかげで、いつもよりワンランク上の料理が出来上がるので料理がより楽しくなります。