耳の病気

耳管狭窄症

耳管狭窄症

耳管狭窄症(じかんきょうさくしょう)とは、鼻の奥と耳をつなぎ、耳の中の圧力を調整する働きを持つ“耳管”と呼ばれる管が、狭くなってしまう病気です。治療せずとも自然治癒することもあれば、治らない場合もあり、継続的に通院される方もいる病気です。

耳管が塞がってしまうと、耳が詰まった・こもった感じ(閉そく感)になったり、聞こえが悪くなったりする症状が現れます。
また、長引くと難聴が進行する恐れのある滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)を合併する場合もあるので、注意が必要です。

そんな耳管狭窄症の主な原因は、風邪や副鼻腔炎など鼻や喉の炎症によって、耳管が腫れて塞がってしまうことです。

風邪や副鼻腔炎が長引いている場合や耳が詰まった感じがする場合には、早めに耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。

耳管狭窄症の症状について

耳管狭窄症の主な症状は、次の通りです。

①耳が詰まった感じ、こもった感じがする(閉そく感)
②聞こえが悪い

また、耳管狭窄症の症状は、逆の現象が起こる「耳管開放症(耳管が開いたままになる)」と似ていますが、耳管狭窄症の場合には「前かがみや仰向けになっても、症状が軽快しない」という点に違いがあります。

「ストレスと関連性がありますか?」と相談を受けることがありますが、耳管狭窄症との関連性はありません。ストレスにより耳つまりがでる病気もありますので、検査を行って判断していく形となります。

耳管狭窄症の原因は?

耳管狭窄症を発症する主な原因は、風邪・副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎など鼻や喉の炎症が耳管にまで波及して、耳管を塞いでしまうことです。
また、アデノイド肥大や耳管周辺に腫瘍ができることでも、耳管を圧迫し狭くなります。

(画像)メディカルイラスト図鑑|耳の構造図

耳管は通常閉じており、あくびや唾をのむと一瞬だけ開いて、耳の中と外の圧力を調節する働きを持っています。
しかし、耳管が狭くなると、耳の中の空気圧が低くなり、鼓膜が内側に凹み、耳がこもったように感じたり、自分の声が響いたりします。

耳管狭窄症の検査・診断について

耳管狭窄症の検査

・問診
耳鏡や内視鏡カメラを使って、鼓膜が内側に凹んでいないか、滲出液が溜まっていないかを確認します。

・聴力検査
滲出性中耳炎を合併していると、聞こえづらくなる(難聴)ことがあるので、純音聴力検査は重要な検査です。

・ティンパノメトリー
耳の外側から鼓膜に圧力をかける検査を行って、中耳(鼓膜の内側)の中の圧力と周囲の大気圧に差があるかを確認します。

・内視鏡検査
大人の場合、稀に鼻の奥の腫瘍が原因となっていることもあるため、念のため内視鏡で確認する場合があります。

耳管狭窄症の診断

①耳管が機能的・器質的に開きにくい状態
唾をのんでも開かず、そもそも耳管から中耳に空気が送り込めない状態。

②慢性的(3か月以上)に中耳の病気や耳の症状がある場合
慢性的に滲出性中耳炎・慢性中耳炎などの中耳疾患や飛行機に搭乗・登山・トンネルに入ると、耳に違和感・耳痛がある場合。

③耳管閉鎖障害(≒耳管開放症)が否定できること
・前かがみや仰向けに体勢を変えても症状が改善しないこと
・耳管通気圧が高いこと

耳管狭窄症の治療について


耳管狭窄症の治療では、原因となっている鼻や喉の炎症の治療を薬物療法にて行い、並行して、耳の通気を行います。
しばらく続けても、効果が見られない場合に外科的手術を検討します。

薬物療法

原因となっている風邪や副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎などの治療を行います。場合によっては漢方薬を併用します。

抗生物質や消炎剤、抗ヒスタミン薬の服用や鼻のネブライザー(吸入器)を使い、耳管への炎症・腫れを鎮めます。
また、滲出性中耳炎を合併し、中耳に滲出液が溜まっている場合には、粘液溶解剤も併用します。

耳管通気療法

「耳管通気療法」とは、鼻から耳に空気を送る治療法で、内耳内と外との圧力を等しくしたり、鼓膜内に溜まっている滲出液を外に排出したりします。
薬物療法と並行して、定期的に通院して、耳管通気療法を約2~3か月間行います。

耳管通気療法には、鼻からカテーテルを入れて、耳管経由で中耳に空気を送る「カテーテル法」と、子供向けにゴム球を使って空気を送る「ポリッツェル法」があります。

また、自宅で行える「自己通気法」として、鼻をつまんだ状態で頬を膨らませるようにして通気する「バルサルバ法」、小さなお子さんでもできる鼻で風船を膨らませる方法「オトヴェント」もあります。オトヴェントのやり方は、まず片側の鼻を指で押さえて、深く息を吸います。押さえていない方の鼻に風船を持っていき、そのままゆっくり鼻から息を吹き込んで風船を膨らますだけです。この鼻風船を行う動作は必要以上に圧はかかりません。中耳内の換気が行われることによって、滲出性中耳炎が改善していく仕組みです。

手術療法

薬物療法や耳管通気療法を3か月程度行っても、耳の詰まる感じや聞こえが元に戻らない難治性の場合には、鼓膜を切開し、そこに小さな穴が開いたチューブを入れて、空気の通り道を作る「鼓膜チューブ留置術」が行われます。

また、耳管を塞いでいる原因がアデノイド肥大であれば「アデノイド切除術」を、腫瘍の場合には、放射線治療や化学療法、腫瘍の摘出手術などが検討されます。

手術が検討される場合には、いずれの場合も連携病院へご紹介させていただきます。

まとめ

耳管狭窄症は、風邪や副鼻腔炎など比較的よくある鼻や喉の炎症が原因となって、発症する病気です。

また、耳管狭窄症は、飛行機の離着陸で耳が痛くなったり、耳が詰まった感じが残ってしまったりする「航空性中耳炎」や中耳に滲出液が溜まり、聞こえが悪くなる「滲出性中耳炎」の原因にもなります。

たかが風邪症状・鼻症状と思わず、なかなか治らない方は、一度当院までご相談ください。

記事執筆者

記事執筆者

馬込駅前あくつ小児科耳鼻咽喉科
院長 岩澤 敬

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 専門医
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 補聴器相談医
日本めまい平衡学会 めまい相談医

詳しい院長紹介はこちら

馬込駅前院 予約

西馬込あくつ耳鼻咽喉科
院長 阿久津 征利

日本耳鼻咽喉科学会 専門医
日本めまい平衡医学会 めまい相談医
臨床分子栄養医学研究会 認定医

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西馬込院 予約

耳の病気

  1. 急性中耳炎

    急性中耳炎

    急性中耳炎は急に耳が痛くなる(耳痛)、耳だれが出る(耳漏)、発熱が主な症状です。しかし乳幼児では耳が痛いと言うのを訴えることができず、不機嫌になったり、泣いたりして耳の具合の悪さを表現します。急性中耳炎は、1歳までに30%、2歳までに50%、3歳までに70%の子供がなると言われており、とても身近な病気です。

  2. 滲出性中耳炎

    滲出性中耳炎とは子供・大人ともに薬だけでは治らない事があり手術(鼓膜換気チューブ)になることもある病気です。子供の中耳炎は鼻風邪(鼻水)が原因で起こり、薬・漢方薬・器具を使った治療(オトベント)があります。大人の滲出性中耳炎がある場合は、鼻腔内・上咽頭に炎症や腫瘍がないかを確認する必要があります。

  3. 外耳炎(耳かきしてから耳が痛い)

    外耳炎は“外耳道炎”とも呼ばれ、耳の穴から鼓膜の手前までの外耳道に炎症が起こり、耳のかゆみ・耳の痛みが現れ、さらに外耳道が腫れると、耳が聞こえづらくなる(難聴)、耳が詰まった感じ(閉そく感)を伴います。

  4. メニエール病

    メニエール病は30~50代の女性に多い疾患で、めまいが突然現れ、同時に吐き気・難聴・耳鳴り・耳の閉そく感(詰まる感じ)などの症状も起こります。

  5. 良性発作性頭位めまい症

    良性発作性頭位めまい症は、耳の奥の「内耳(ないじ)」にある三半規管(さんはんきかん)と、耳石器(じせきき)という器官の障害で起こります。頭を大きく動かした時やある一定の頭の向きになった時に、ぐるぐる回転するようなめまいが起きるのが大きな特徴です。

  6. 耳管開放症

    耳管開放症は、軽症例では自然治癒することもありますが、不快症状が続くと、ストレスとなり日常生活に支障を来すことも。耳抜きで一時的に軽快することがあります。症状は、自分の声が響くなど。原因は、ダイエット、妊娠中、ピル内服など。治し方・治療は、漢方薬などの薬物治療が中心となります。

  7. 耳管狭窄症

    耳管狭窄症(じかんきょうさくしょう)とは、鼻の奥と耳をつなぎ、耳の中の圧力を調整する働きを持つ“耳管”と呼ばれる管が、狭くなってしまう病気です。 耳管が塞がってしまうと、耳が詰まった・こもった感じ(閉そく感)になったり、聞こえが悪くなったりする症状が現れます。 また、長引くと難聴が進行する恐れのある滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)を合併する場合もあるので、注意が必要です。

  8. 補聴器相談

    「聞こえが悪くなってきたら、補聴器を使おう!」と思う方も多くいらっしゃるでしょう。 しかし、補聴器は買って耳に付けたらすぐ使える(聞こえる)ようになるものではなく、その人に「合う・合わない」があるのです。 そのため、「補聴器を買おうかな」思っている方でも、まだ補聴器が必要ではないケースも多く存在します。